今この瞬間にいて、小さなしあわせを味わう

今この瞬間にいて、そこにとどまって、素晴らしい現実を味わう。

これは私の大切な人がメンタルヘルスで苦しむ人たち（メンタルヘルスサバイバー）にむけて書いた文章の一部。彼女自身も大変な人生を生き抜いた人で、私が人生で最も精神的に苦しい時に出会った。いま、振り返っても身体の病気をしたときよりも、ずっと落ち込んでいた時期だった。

何としても私の人生を変えたい。そう思って、カウンセリングを勉強し始め、そのときに出会った人。向精神薬を止められると聞いて、彼女に会いたい一心でロンドンで開かれた会議に出たのは、私が引き寄せた必然の行動だったのだと思う。このときから、私の人生はほんと変わったと思う。ひとりで苦しまなくてもいいことも学んだ。英語が十分話せなかったけれど、何とか彼女と話ができたのもいい思い出なのだ。

深く深く心が傷つくと、過去に起こったことにたいする怒りで頭がいっぱいになるか、または未来に起こるかもしれない心配で頭がいっぱいになってしまう。そのどちらかに気をとられて、現在のことには気づかなくなってしまうのだ。そうして「自分は無力な人間だ」「生きている価値はない」と落ち込んでしまう。

そんな状態から抜け出すには、ちょっとコツがいる。

過去のことも未来のことも考えるのをやめて、現在にしっかり注目すること。
今この瞬間は、怖いことも起こっていないし、誰も傷つける人もいない。たとえ物理的にひとりでいて孤独を感じたとしても、今この瞬間はあなたを傷つける人は誰もいない。

それをしっかり感じようってことなの。

過去の怒りや未来の心配から注目をそらして、今この瞬間にちょっとでも注目できると、心の中に隙間ができて、自分の人生をどうしたいのかしっかり考えることができる。この時間がとても重要なのだ。誰でも自分の人生をデザインすることができるのだから。

なぜこんなことになったんだろうって分析して嘆いても、何も変わらない。結局、自分を責め続けることになってしまう。それよりも、大きく大きく生きることを考えて、どんな人生にしたいのかわくわくしながら考えてみる。そして、夢に近づく「小さな一歩は何か」って考えて、実際にやってみることが大事なの。
そして、いまこの瞬間、自分のしたいこと、好きなこと、楽しいことをしてみるのが大事なのよ。

そんなことを教えてもらいました。

最初は抱えている問題が大きすぎると思っていたから、辛すぎてわくわくできなかった。楽しいことが考えつかない自分に、なおさら落ち込んでいった。「楽しいことなんてないよ。できないよ。」って泣いたことも数知れず。

で、そのときの私に、今の私に言ってあげたいことがある。

「だったら、無理に楽しいことをしようって考えなくていいんだよ。今、あふれ出てくる思いを全部出してしまっていいよ。泣きたいなら泣きたいだけ泣いて、怒りたいなら怒りたいだけ怒っていいよ。傷ついたときに出せなかった感情を、今までずっと抱えてきたのだから、ここで全部流しちゃっていいよ。私はあなたがやりきるまで、ずっとそばにいるからね。」

そう言ってあげる。

楽しいことをしようって思っても、何度も何度も感情が湧いてくることがある。なぜなら、長い間我慢していたから。それはおかしなことではないよ。自然なことだよ。
でそうやって感情を流していくたびに、心の中の隙間が大きくなって余裕が生まれる。そのときに楽しいことを思いつくもの。忘れていた自分の好きなことをしようって思うかもしれない。そして、実際にできる日も来るんだよ。

楽しいことができるようになると、過去も未来もだんだん気にならなくなる。今の時間を味わえるようになる。それは小さなことかもしれないんだけれど、辛い過去から抜出せる大きな一歩。自分の人生を豊かなにする一歩なのです。

私の大切なその人は、メンタルヘルスのサバイバーが力を取り戻すための活動に力を注いできた。アメリカ人でメンタルヘルスのことにずっと関わってきて、患者の立場の人を超えて、家族、支える人たち、医療者など世界規模でネットワークを作ってきた。

私が彼女の文章を読んだのが1996年頃。実際に会ったのは1998年だった。辛いトンネルから抜け出したいともがいていたころ、彼女の存在は大きな心の支えだった。「いつも楽しんでいいのよ」。彼女は自分を楽しませるために、いろんなことを考えていたな。

彼女のことを過去形で書いているのは、7月に突然亡くなったから。7月末にも8月にもワークショップをする予定だったらしい。とても悲しいお知らせでした。

そして、私はこの記事が書けるほど、自分が回復していることを実感している。「楽しいことなんかひとつもない」って絶望したあの私のままではなくて、「大丈夫。自分の人生を生きられるから。準備は必要かもだけど、イメージしたとおりに生きられるから」って話している私になれたこと、とても感謝している。

明日、彼女の追悼の意味で、メンタルヘルスについてのクラスをします。みんなが自分の人生を生きる力を取り戻すことができたら、社会でメンタルヘルスで苦しむ人はいないくなると思うの。彼女の想い、日本でちゃんと引き継いで、私は伝え続けているよ。

I miss you. I never forget your smile, your hug, and your thoughts. 

ではでは～

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